1.押出法ポリスチレンフォーム断熱材の組成
押出法ポリスチレンフォーム断熱材の組成は、その殆どがポリスチレン樹脂で、それに発泡剤、難燃剤などが含まれています。
押出法ポリスチレンフォーム断熱材の組成は、その殆どがポリスチレン樹脂で、それに発泡剤、難燃剤などが含まれています。
押出法ポリスチレンフォーム断熱材は、その組成の殆どがポリスチレン樹脂であるため、炎を当てると燃えます。
難燃化剤を添加していますので、微小火源では着火しにくくなっておりますが、元来燃える性質があります。そして燃えたときは、ポリスチレン樹脂の不完全燃焼によって、木材、紙、ワラより多い「すす」と刺激臭を発生します。
物質が加熱されて発火するときの温度を発火温度といいます。加熱された物質からは、可燃性のガスが発生し、この可燃性のガスが燃えだす温度を引火温度といいます。尚一般に発火温度は、引火温度より高くなっています。
押出法ポリスチレンフォーム断熱材の原料であるポリスチレンならびにその他のプラスチックの引火温度、発火温度を表3に示します。
区分プラスチック | 建築材料引火温度 | 発火温度 |
---|---|---|
ポリスチレン | 370℃ | 495℃ |
ポリウレタンフォーム | 310℃ | 415℃ |
ポリエチレン | 340℃ | 350℃ |
エチルセルロース | 290℃ | 296℃ |
ナイロン | 420℃ | 424℃ |
スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂 | 366℃ | 455℃ |
スチレン・メチルメタアクリレート共重合樹脂 | 338℃ | 486℃ |
ポリ塩化ビニル | 530℃ | 530℃ |
ポリエステル+ガラス繊維 | 398℃ | 486℃ |
メラミン樹脂+ガラス繊維 | 475℃ | 623℃ |
出典:S.L.Madorsky:J.Polymer Science,4,1949
消防法施行令表第4で定める数量以上の同表の品名欄に揚げる物品を指定可燃物といい、消防法でその保管方法が規制され ています。ただし、不燃性又は難燃性を有する合成樹脂類は、延焼危険性、消火活動困難性などを考慮して、特殊可燃物の対象外としています。不燃性及び難燃性の判断は、JIS K7201に定める酸素指数法により判断し、この試験法に基づいて、酸素指数26以上の物を不燃性又は、難燃性を有するものとして取り扱われます。
押出法ポリスチレンフォーム断熱材の酸素指数は26以上でありますから、難燃性を有するものとして取り扱われ、指定可燃物に該当しません。(消防庁通達 消防予第184号)
品名 | 数量 |
---|---|
綿花類 | 200kg |
木毛及びかんなくず | 400kg |
ぼろ及び紙くず | 1,000kg |
糸類 | 1,000kg |
わら類 | 1,000kg |
ゴム類 | 3,000kg |
石炭及び木炭 | 10,000kg |
木材加工及び木くず | 10m3 |
合成樹脂類 [発泡させたもの] | 20m3 |
合成樹脂類[その他のもの] | 3,000kg |
一般に有機材料が燃えたとき発生するガスの殆んどは、炭酸ガス(CO2)と水(H2O)であり、押出法ポリスチレンフォーム断熱材の燃焼時も、同様に発生するガスの大部分は、炭酸ガスと水ですが、他に不完全燃焼による一酸化炭素や微量のポリスチレン燃焼生成物(炭化水素等)およびハロゲン化水素等の発生がみられます。
これらの燃焼ガスの組成は、燃焼状態により変わりますが、押出法ポリスチレンフォーム断熱材はポリスチレンを約30倍に発泡膨張させたものですから、燃焼した際の生成ガス量は、同一体積の他の有機の建材に比較して非常に少ないと言えます。
主な建材の1m³当たりの重さは概ね次の通りです。
押出発泡ポリスチレンフォーム | 28 ~ 35 kg/m3 |
---|---|
合 板 | 510 ~ 545 kg/m3 |
杉 材 | 330 ~ 366 kg/m3 |
わら畳 | 230 kg/m3 |
表-5に主な有機質材料の熱分解生成物を示します。
これは、試料を800℃において、酸素21%の空気を供給した場合を“自由燃焼”とし、酸素11.8%の空気を供給した場合を“酸素不十分下の燃焼”として、実験したものです。
一般に火災の場合は燃焼と熱分解が複雑に絡み合って起っていると考えられますが、汎用建材である木材、合板等に比べて非常に比重の低い状態(合板の 1/15、杉材の1/10)で使用される押出法ポリスチレンフォーム断熱材は、これを容積単位で比較するならば、その生成ガスが少量であることを理解することが出来ます。
区分プラスチック | ポリス チレン |
塩ビ | ナイロン | 絹 | 紙 | 木材 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
自由燃焼 | 炭酸ガス | 2.192 | 0.433 | 1.226 | 1.352 | 1.626 | 1.202 |
一酸化炭素 | 0.174 | 0.229 | 0.304 | 0.634 | 0.270 | 0.135 | |
ホルムアルデヒド | - | - | 0064 | 0.0024 | 微量 | - | |
フォスゲン | - | 0.0001 | - | - | - | - | |
シアン | - | - | 0.0076 | 0.036 | - | - | |
アンモニア | - | - | 0.032 | 0.035 | - | - | |
塩酸 | - | 0.496 | - | - | - | - | |
酢酸 | - | - | - | - | - | - | |
酸素不十分化燃焼 | 炭酸ガス | 1.698 | 0.743 | 0.907 | 1.033 | 0.934 | 1.001 |
一酸化炭素 | 0.540 | 0.086 | 0.355 | 0.141 | 0.366 | 0.273 | |
ホルムアルデヒド | 0.003 | - | 0.0065 | 0.0012 | 微量 | 微量 | |
フォスゲン | - | 0.00008 | - | - | - | - | |
シアン | - | - | 0.0098 | 0.007 | - | - | |
アンモニア | - | - | 0.210 | 0.308 | - | - | |
塩酸 | - | 0.473 | - | - | 微量 | - | |
酢酸 | - | - | - | - | 0.009 | - |
出典:UNDERWRITERS LABORATORIES INC. BULLETIN OF RESEARCH NO.53
SURVEY OF AVAILABLE INFORMATION ON THE TOXICITY OF THE COMBUSTION AND THERMAL DECOMPOSITION PRODUCTS OF CERTAIN BUILDING
MATERIALS UNDER FIRE CONDITIONS
BY R.E.Dufour July 1963